2012年7月16日月曜日

1枚の切手から。


最近ではインターネットの普及により通信が便利になり、切手の貼られた手紙を受け取る機会がめっきり少なくなってしまいました。
ですが、今でも各国で記念切手などは健在のようで、配達される手紙に貼られたユニークな切手を見つけると、思わず嬉しくなって、きれいに剥がしてコレクションを楽しんでいます。
そして、そのイラストの背景にある物語などを調べていくと、なかなか面白い発見もあります。

今回は、私のお気に入りコレクションの中から3枚をご紹介します。


【Razze Italiane di Asini Tutelate(イタリア)】

グリム童話を連想させる、可愛らしいロバの横顔に思わず惹かれてしまいました。
この切手は2007年発行、イタリアで保護されているロバ7品種の姿がデザインされています。

右上から順に、
Romagnolo(ローマ)
Ragusano(シチリア島南部の町、ラグーサ)
Amiata(トスカーナ地方)
Pantelleria(パンテッレリーア島)
Sardo(サルデーニャ島)
Asinara(アジナーラ島)

イラストを見る限り、どのロバも似たような体型で、あえて探せば耳の形、色の濃淡が違う程度。。。
実物を目にしたら、その道の専門家でも無い限り見分けるのは難しそうです。

ちょっと変わりダネと思われるのは、左下のAsinaraのロバ。
このアジナーラ島はサルデーニャの北にある小さな島で、野生保護区に指定されており、この白いロバは「アルビノのロバ」と呼ばれこの島の名物だそうです。



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 【Mrs Gamp(イギリス)】

このタダモノでない風貌のおばあさん、一体何者なのか気になり、ネットを駆使して調べてみました。
チャールズ・ディケンズの小説「Martin Chuzzlewit(日本未出版)」という小説の登場人物でした。

助産婦兼付き添い看護婦兼納棺師という3つの職業を持つ未亡人とのこと。
ですが、この人間の生死に関わる職業の献身的イメージに反して、彼女のキャラクターは「でぶで酒飲み、がめつく食いしん坊で、お喋り」
ヴィクトリア王朝時代を逞しく(ずる賢く)生き抜いた女性の1つの典型でもあるようです。

イギリスでは看護婦といえば、彼女とほぼ同じ時代に活躍したフローレンス・ナイチンゲールが白衣の天使として有名ですが、Mrs.Gampはその真逆を行くキャラクター。
ナイチンゲールは病院看護婦として、Mrs.Gampは付き添い看護婦として、現在でもイギリス人の間で連想されるステレオタイプで、Mrs.Gampは看護婦業のイメージの足を引っ張るとイギリス看護婦協会の頭痛のタネなようです。



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 【Technisches Museum Wien(オーストリア)】

この切手、ひときわ目を引いたのは、なんと3D加工です!
掲載写真ではわかりにくいのですが、中央の車がこちらに迫って見えます。

さて、この車はナニモノか?
早速、表記にあるウィーン工業博物館のWebSiteを調べてみました。

この車、Mercedes W196 といい、1954年のF1グランプリで登場したレーシングカーで、産業博物館の目玉の展示品の1つのようです。
初戦であるF1フランスGPでは優勝を果たし、その後も 快調に12戦9勝と続きましたが、翌1955年のメルセデスF1敗退により、惜しまれながら活躍を終え、現在はこの博物館に展示されています。


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1枚の切手から、その物語を探っていく作業は、1冊の本のページを1枚、そしてまた1枚、と宝探しのように見つけながら読み進んでいくようで、思いがけぬ発見や、全く予想外の横道に反れることもあり、私にとってはささやかな楽しみの一つです。

次はいつ、どんな切手と巡り合うのか、全くの運任せなので、探り当てた物語には、思わず運命的な出会いのようなものを感じてしまいます。