2012年8月10日金曜日

Santa Maria della Vittoria 教会


Santa Maria della Vittoria教会は、バロック様式を代表する名作建築であり、最近ではローマを舞台にした映画「天使と悪魔」にも登場して一躍有名になりました。
ローマの共和国広場からほど近い、Via 20 Settembre(9月20日通り)の入口角というわかりやすい立地です。

ですが、実は私自身、存在は知っていながらなかなか訪れる気持ちになれず、ローマに住んでいながらも、一度も中へ入ってたことがありませんでした。

今ままで入る気になれなかった理由は、現在のこの外観のためです。(下の写真)

2012年8月現在
つまり、外装修復中。
ファサードは完全に覆われており、わずかに見える建物の側面もなんだか地味。。。な様子です。
通常このような修復工事は長期化して数ヶ月などではとても終わらないので、一体いつから始まったのか、そしていつ完成するのかは全く謎です。

 ですが、ローマに在住していながら、名作と呼ばれるこの教会を素通りし続けるわけにはいかない、と、意を決して入場したところ、内部は外観からは全く予想もつかない別世界でした!

 決して広くない室内は、天井から床まで、至る所に隙間なく装飾がほどこされ、はっきり言ってあまりのド派手さ(!)に圧倒されます。
そして、平日の昼間にもかかわらず、訪れる観光客でかなりの混雑ぶりでした。

天井画
 天井に描かれた迫力あるフレスコ画「異教徒に勝利する聖母マリア」は、この教会の名前にも由来する重要なモチーフが描かれています。
このタイトルの「異教徒」とは、プロテスタント教徒のこと。
教会建設時の17世紀頃にカトリックと対立して、度々ヨーロッパ各地で激戦があった時代背景によるものです。
画面下部に落とされ山積みになっている人々が、その「異教徒」であるとのこと。
このような劇的な巨大作品に表現するパワーもすごいですが、同じキリスト教徒同士、そこまで憎み合わなくても。。。とは第三者としての率直な感想です。

聖テレジアの法悦
 ベルニーニの代表作である大理石彫刻「聖テレジアの法悦」は、この教会に所蔵されるローマの必見彫刻の1つです。
 モチーフは、16世紀スペインの聖女テレジアの神秘体験が題材になっています。
彼女の夢の中で天使が現れ、彼女の心臓目がけて矢を突き刺されたところ、激痛と共に素晴らしい恍惚感が押し寄せ、自らの魂が神と共にあると感じた、その瞬間の場面を表現しています。
恍惚感の中、完全に脱力したテレジアの表現が素晴らしく、又、天井窓からの自然光を利用して背景の金の光線が輝く演出効果が、劇的ムードを高めます。


 さらなる演出効果として、この作品の両脇の壁面には劇場のBOX席を模したレリーフが施され、まるで舞台を観覧しているような様子です。
BOX席の人物像たちは、この礼拝堂の発注主であるコルナロ家のファミリーです。


聖ヨセフの夢
こちらは、ドメニコ・グイティによる「聖ヨセフの夢」。
キリストの養父であるヨセフが、天使のお告げにより、妻マリアが精霊によりキリストを身籠ったことを知らされる場面です。
多くの作品と同じく、養父ヨセフは生殖能力がなかったということで老人の姿で表現されています。

カルミネの聖母
更に彫刻作品をもう1つ。
聖母マリアが天から降りてきて、聖シモンに肩衣を手渡す場面です。
この彫刻を見て、おや?と思ったのは、マリアの頭上の光の輪が電飾(数個電球切れ)であることです。
制作当時には、さすがに電飾はなかったと思うのですが、これも劇的演出の1つでしょうか。

改めて教会内部を見渡すと、所々に置かれた献金箱のカラフルな聖人像の頭上にも電飾がキラキラ光っています。
中世の芸術作品と現代のテクノロジー(?)をためらいもなく合体させてしまうセンスは面白いと思いました。
献金箱1

献金箱2

 この教会の様式であるバロックとは、中世のルネッサンス様式の後に登場したスタイルで、優美や調和を追求するルネッサンスとは対照的に、均衡を破り劇的、そして過剰とも思われる装飾が特徴です。

Santa Maria della Vittoria 教会は、その力強いバロックパワーを存分に体感させてくれるスポットだと思いました。


Chiesa di Santa Maria Della Vittoria
Adress: Via XX Settembre 17, Roma