白亜のヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂とカピトリーニ美術館へ続く大階段の間に、なんとも地味に佇む遺跡があります。
以前からずっと気になっていたのですが、場所柄、常に土産物の屋台や軽食を売るバンなどが遺跡の前を占拠していて、なかなか近づく機会がありませんでした。
ですが、今日は意を決して、屋台の裏に入り込み、じっくり観察してみました。
案内板 |
この建物は、「Insula dell'Ara Coeli」といい、紀元後2世紀頃に建設された古代ローマの典型的な共同住宅とのこと。
長らく地中に埋まっており、完全に発掘されたのは1930年代だそうです。
道路面から見下ろす。 |
フレスコ画 |
*
この遺跡の名称にある「Insula」とは、古代ローマの多層式共同住宅のこと。
都市に人口が集中するようになって、地価の高騰により一戸建てを所有するのが難しくなった中流や下層階級の人々のための住居として発明(?)されたシステムです。
通常は1階部分は食堂や店舗、2階には店舗の倉庫などが入り、3階以上が賃貸アパートとして利用されていました。
上階へ行くほど部屋は狭く区切られ、賃貸料も安かったのは、昇り降りの不便さ、そして火事の際に避難が困難という理由からでした。
Insula想像図 |
更に、古代ローマでは冬の寒さを防ぐために、紀元後1世紀から床暖房システム(床下に温湯パイプを巡らせる)が開発されていたとのこと。
さすがに電気はまだ無かったので、照明は炎に頼るしかなかったようですが。
はるか昔に思われる古代の生活も、世界の中心といわれたローマでは、現代人の生活と比べて、そう遠くかけ離れたものではなかったのかもしれません。
模型(ローマ文明博物館所蔵) |