2012年8月13日月曜日

Marcello 劇場


マルチェッロ劇場 (Teatro di Marcello)
古代ローマ最大の劇場といわれる。
紀元前50年頃ユリウス・カエサルにより計画され、後の皇帝アウグストゥスにより紀元前12年に完成。
名前の由来は、若くして死去したアウグストゥスの甥Marcellusに捧げる劇場とされる。


マルチェッロ劇場遺跡は、白亜に輝くヴェネツィア広場の裏手にあり、観光名所としては少々地味な存在です。
私がローマを初めて訪れた当初、この遺跡については全く予備知識がなかったのですが、その風変わりな姿に大変強い印象を受けました。

この劇場との初対面は、ある夏の夜。
どうやら古代遺跡なようですが、その上部にある窓から電気の明かりが漏れ、明らかに誰かが生活している様子です!


後日、建物の裏に回って様子を見ると、少々年季は入っていますが間違いなく住居用の建築物の風采です。

古代ローマ復元図
 この建物の歴史について調べてみたところ、完成当初にはギリシャ演劇などが上演される、収容1万2千人程度の野外大劇場であったとのこと。
外壁の3層のアーチ柱のデザイン(下からドリス式、イオニア式、コリント式)は後に建設されるコロッセオの外観の参考に使われたようです。
舞台の背後に見えるテヴェレ川に浮かぶティベリーナ島が観劇ムードを高めたことが想像されます。

その後、ローマ帝国の崩壊により、この劇場は廃墟として放置される時期が数世紀続きます。
紀元後12世紀にFavvi家により要塞に改築、そして16世紀にはローマの名門Orsini家によって大規模な改造工事が行われます。
その際に3層目のアーチ壁は取り払われ、上部に住居が増築された現在の形になったようです。

1810年のMarcello劇場

 その後、さらに改造が進み、最も変容が激しかったのが上の画像の姿です。
1階部分には店舗や住居が入り、遺跡というよりも町の通りの建物として、すっかり当時の景観に馴染んでいます。

1930年、ムッソリーニの時代になって、下層階の店舗や住宅は撤去され、再び遺跡らしい姿を取り戻しました。
3階以上の増築部分は、そのまま保存され、内部は分割されアパートとして現在も利用されています。


イタリアでは、ローマを始め歴史保存地区での建物の外観維持に関する大変厳しい規制が多々あります。
このマルチェッロ劇場アパートを外から見る限りでは、まずはエアコン室外機の取り付け禁止、TVのパラボラアンテナ取り付け禁止、そしてもちろん洗濯物を外に干すことも禁じられている様子です。
又、窓枠も古びた木製の物で、最新式のアルミサッシなどに付け替えることはできなさそうです。

 そして、夜になると遺跡はライトアップされて輝き、夏の夜には遺跡をバックに野外コンサート。。。
古代遺跡に居住する素晴らしさと引き換えに、実際の生活には色々な犠牲が伴いそうです。



Teatro di Marcello
Via del Portico D'Ottavia 29, Roma